〈…仙界大戦が終わったら、一度そなたを訪ねよう…〉
 …そうして…少年の声も気配も消えた…
 夢の中…太上老君は一人佇む…
 〈…私達とあの子では時の流れが違う…仙界大戦が終わったらなんて…それでは遅いかも知れないよ…呂望…あなたはそれで本当にいいの…〉
 太上老君はいまはもういない少年に思いを馳せ夢にたゆたう…

 
幕間―プロローグ2―その後―

 少女が一人草原に佇んでいた…一匹の羊を連れて…

 村が襲われたあの日…あれから随分時が経った…

 「大丈夫だよ…お前が僕を見つけることが出来ない時には、僕の方から行くから…時間はかかるかもしれないけど…だから…僕が行く迄は、一人で村に帰ってはいけないよ…」
 あの日…兄様はまるでこうなる事を知っているかの様にそう言った…
 
 「またここに来ていたの継」
 振り向くとそこには碧色の髪に金色の瞳を持った不思議な人、どこか兄様に似ていると思ったその人が居た。
 「老子様…」
 「…老子でいいよ継…それより草原に一人だと危ないよ…」
 「こうしてればいつか兄様が迎えに来て下さった時に判りやすいと思って…」
 老子の言葉に継は俯いて続ける…
 「皆はそんな事をしても無駄だと…諦めた方が良いと言うのです…でも…」
 俯いて、項垂れた様子であった継が顔を上げ老子を見つめる…
 「…老子様は何か知っておられるのではないですか…兄様の事を…」
 老子の顔を見つめ、躊躇いながらもはっきりと問い掛ける…
 継の真っ直ぐな視線を受け止めて、老子は一人の少年に思いを馳せる…夢の中で垣間見た仙人界で修行を積む一人の道士…太上老君にとってすら唯一未知の存在…その名の表すままに今この世界の希望たる彼…
 「…知っていてもね継…言えない事…どうする事も出来ない事という物があるんだよ…」
 「知っています老子様…でもせめて…せめて兄様の安否だけは…」
 「…継…君の兄上は無事でいるよ、けれどそこはとても遠い所で、彼は現在(いま)とても忙しいから、君が会えるのはまだまだ先の話しだよ…」    
 継の縋るような言葉に、老子は淡々と告げる。
 「老子様…それは…いつかは会えるのですか…」
 「…眠い…ぐー…」
 継の問い掛けにしかし老子は答えず、眠りに就いた老子は暫く起きることは無かった…      
                              
                                             ―終わり―
 ―あとがき―
 今回は番外編です。太公望が仙人界に上がってから十数年後位の老子と呂望の妹との会話です。
 何かやたら老子が話してますが、単に三年振りに起きただけです…
 呂望の妹の名前、どうしようか散々悩んだ末に今回遂に出しました。
 何で『継』なのかは分かる人には分かるでしょう…分からない方、申し訳ありませんがしばしお待ち下さい、これから先のネタバレを防ぐ為に現時点に於いては敢えて伏せさせて頂きます。
 それではまたの機会に<(_ _)>